「その宿場に、へんな女がいた。顔がきれいで、気立てがやさしい。頭が切れて読み書きができる。よく、ちょっかいを出して、手柄も立てるが、失蚊も多い。他所者で、その素性を、だれもしらないために、人は、へんな女だという。頃は幕末の弘化から、明治の初めにかけてのことである。その宿場というのは、日光街道を、千住、草加、越し谷と下って、やがて栗橋、房川(利根川)の渡しを渡った所、中田宿という」

このような書生出して始まる「宿場の女」は中田宿を舞台にした時代小説です。出生の判らない女が宿場に住みついて、体を張って働き、姑息になりがちな住民や役人を脅かしたり励ましたりして宿場の名物女になっていく、その経過が明るく面白く描かれています。作品について川口松太郎は「この作家がどんな過去と経験を持つ人か、若い人か中年の人か、そんな事も一切知らないが「宿場と女」は誰にも書ける作品ではない。新人賞の傑作として推賞する。」と絶賛しています。

著者の福田螢二は明治43年生まれ。鎌倉学園、一橋大学を卒業後、40年間教職にあり、傍らで俳句、短歌、小説を書くことをライフワークとしていました。古河一高でも教鞭を取られているので先生の授業を受けられた方々も多数いらっしゃると思います。小説のスタートには、推理小説で第二作目の「静かな復讐」が「宝石新人二十人集」に載り、「叙情の殺人」が宝石賞佳作第一席。「虚勢」は講談社文学賞を受賞しました。 石岡高校の校長を最後に教職を退かれた先生は時代小説に転向。表題の「宿場と女」で第四回の小説サンデー毎日新人賞を受賞しました。他の作品としては「歳月無情」「水戸の落日」「吉原田圃はおぼろ月」などがあります。昭和60年教え子たちにおしまれつつ逝去されました。

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