作家 永井路子

 文学館の開館でき、市長さんはじめ関係の皆さまのご苦心を脇から拝見しておりました一人として、ご努力に感謝するとともに、まず、すばらしい建物が完成したことを、とりわけ嬉しく思っております。今となっては希少価値となった歴史の泌みこんだ自然の中に、風格あるロマンチックな建物が出現したことは、周辺の、いや、日本全国の方々に誇ってよいことです。

  しかし、私が、生まれつつある「文学館」に、まずお願いしたいことは、固苦しい「ブンガクカン」的なイメージを拭きとって出発していただきたいことです。全国各地に出来た文学館の多くは、その土地にゆかりのある文学者を顕彰するためのものです。それも意義のないことではありませんが、その作者への讃歌が、そのまま文学館を尊大に構えた、近づきがたい存在にしてしまっていることはたしかです。古河の文学館は、少なくとも、そんなよそよそしいものでなく、皆さまが気軽に出掛けて楽しい「ひろば」であってほしいのです。

 幸か不幸か、ゴリッパな文学者が出ていないことも事実ですが、そのための負け惜しみではなく、いたずらに過去を讃えるためのものではない、新しい文学館のありようを、古河から出発させたい、新しい世紀のために・・・と願っています。古河には過去に文化を育むさまざまな「ひろば」がありました。私もその恩恵を受けた一人ですが、その「ひろば」を現代に再現した文学館であって欲しいのです。幸い新しく古河にお住まいになられた方も増えていることですし、それらの方々に十分に才能を発揮していただくことを、心から期待しております。 読む(本)見る(ビデオ)聞く(レコード)等の資料もかなり集まったようですし、私も多少のお手伝いをさせていただきました。それらを楽しみながら、さらに皆さま方ご自分が、書き、語り、本にして「古河の文学」を創られること、それが私の願いです。現在活躍中の、推理小説家小林久三氏、詩人の粕谷栄市氏、粒来哲蔵氏ほか、古河ゆかりの方々もおられることですし、それらの方々にもきっとご協力が得られることでしょう。 歴史公園(古河総合公園)も歳月をかけて見違えるほど充実してきました。それも草木を育てる方があってのこと。文学館も、皆さまの、育てよう、一緒に遊んでやろうというお気持ちの中で、ぐんぐん成長していくのではないでしょうか。

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