一葉に学んだ東京女子大学学長 安井てつ

安井てつ 先月まで文学館で開催された「和田芳惠展」において、和田芳惠の一葉研究について取り上げましたが、今回は、樋口一葉に直接教えを受けた古河ゆかりの人物をご紹介いたします。
 その人の名は安井てつ(1870〜1945)。てつは、明治3年2月23日、東京府(現東京都)駒込曙町の旧古河藩主土井子爵の邸内で、同藩士安井津守の長女として生まれました。
 明治23年に東京女子師範学校卒業後、母校で教鞭をとりますが、そのころ、てつは、一葉の元で源氏物語と和歌を学んでいます。きっかけは、一葉と懇意な同僚の勧めからで、週一回、同僚と一葉の妹と、てつの三人が、一葉から源氏物語の講義を聞き、和歌を詠みました。この時、一葉23歳、てつは26歳でした。
 一葉が新開地の料理屋の離れのような家に、母と妹と三人で住んでいる事がてつには不思議に思えましたが、小説の材料を得るためと聞き、
また、家族の上品で真面目なのに好感を持ったといいます。一葉の日記(水上日記)には、てつについて次のような記述があります。
 「此夜中町に紙かひにゆく、あらざりしほどに安井てつ子岩手よりもらいたるのなりとて大いなる林檎もて來にける、それも女子師はん校の方へ田舎よりとゞきたるを直に我家にもて來しよし、常に口重に世辞など数々なき人なれど、心にしみてうれしとおもう事のあればかく取わきての事などもすめり、可愛ゆき人のこゝろよと母も妹もひとしくいふ。」
 その後、てつはイギリスに留学。帰国後、大正7年(1918)には、同年創立された東京女子大学の学監となり、同12年、初代学長新渡戸稲造の後を受けて、第二代学長に就任。昭和15年退職、名誉学長の称号を受けました。同18年には、東洋英和女子校校長となり、生涯を進歩的女子教育の向上に捧げました。

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