暦などを見ると、4月8日はお釈迦様が誕生した日とされ、灌仏会もしくは花まつりなどとしるされています。お寺やお堂では、お釈迦様の誕生仏を花で飾り、甘茶を献ずる行事が行われます。この行事は、日本では7世紀ごろから、仏教行事としてとりおこなわれきた伝統行事です。近ごろは、参加する人々のライフスタイルの変化により、月遅れの5月8日や、その前後の日曜日に行うところも多いようですが。
ところで、一般の家庭でもこの日に花を用いる行事がありました。たとえば、古河近郊の農村では、戦前のころの話として、藤の葉と卯木の花を母屋の軒にさしていたといいます。この風景は、古河周辺のみならず、各地にも見られ、わざわざ山に登ってまでも花を摘んできた地方もあったようです。また、関西の方では花を竿にくくりつけて高く立てることもありました。軒の高さのみならず、花を高くかかげることに何か意味があったのでしょう。
このことに明確な解答を用意しているわけではありませんが、次のような解釈もあります。古くは、農業の神さまである田の神が、山からやってくるとされていました。新たに農業が始まる春、田の神がそれぞれの家の軒にある花をめざして降りてくる。だから、花は高く立てられる必要があったと。もっと広く考えてゆくと、花を立てるということは、神仏の来訪する目印としての意味だけではなく、神仏との交流をはかる行為とみることができそうです。道ばたの石仏や、お墓にも花を手向ける心はこの辺にあるのでしょうか。
(特別陳列「花」は5月7日まで)
古河歴史博物館学芸員 立石尚之 |