精霊をみちびく火  盆のあかり

 今回のお題は「盆」です。東京のあたりでは、7月に盆行事をすませてしまう家庭も多いのですが、古河周辺では、おそらく8月に行っていることだと思われます。
 自宅に盆の祭壇(盆棚)をもうける家では、たいてい8月13日の夕方に、盆提灯を持って、盆の精霊(盆様などと呼びます)を迎えてきます。とはいっても、姿かたちのある精霊ではありませんので、形式的にお墓まで行って、提灯に火をつけて帰り、盆棚の行灯や灯明などに火をともすことになります。また、15日ごろには、野まわりといって、盆様に今年の作柄を見てもらうため、提灯に火をともして田畑へ出かけてゆく家も多々ありました。
 盆にともされる火は大活躍です。盆様がどこへ行くのにも火が欠かせません。もちろん盆様が帰る「送り盆」にも火をたきます。どうやら、火は盆の行事のなかでは大切な役割を果たしていたようです。
 火は闇に光を放ち、ものを灰にしてしまう神秘的な力を持っています。そして「あの世とこの世」「仲間とよそもの」など二つの世界を橋わたしする中間的存在でもあるのです。神や精霊を迎える儀礼には、火は必要不可欠なものであったのでしょう。
こういったことは、落語にもうかがわれ、人の一生をろうそくの火にたとえ、それを消さないようにとほんろうされる「死神」の主人公。あの世とこの世を取り結ぶものとして火が効果的にもちいられています。もしかしたら、あの世からやって来る幽霊に火の玉がつきものなのも、そのせいなのかもしれもせん。
(夢あんどんは8月14日・15日)古河歴史博物館学芸員 立石尚之