魂宿る文化財(博物館の使命)

  中央町一丁目に福寿稲荷という社があって、毎年2月8日「針供養」が行われています。折れたり曲がったりした針を豆腐に刺してお参りし、針への感謝をささげるというものですが、そこには、捨てるに忍びないと思う気持ち、いいかえれば「針」に宿る魂を供養したいという”お針子さん“
の願いをかいま見ることができましょう。
 ところで、私たちは、衣類、文具や家具といった物だけではなく、社会の仕組みや因習といったものも、その時代の間尺にあわせて新調してきました。ある意味ではこうした循環が文明の爛熟を促進した、といえるかもしれません。
 一方、先に示した「針供養」の例を待つまでもなく、手放すという行為に直面したとき、人は、ほのかな感傷を感じずにはいられないことでしょう。モノに宿る魂を感じ、古き良き時代の遺産を残したいという、この高尚なセンチメンタリズムは、古今東西、共通しているように思われます。誤解を恐れず申し上げますが、この情念なくして人類の豊かさはありえないのではないでしょうか。
 現在、歴史博物館では「新収蔵品展」を開催、多くの方々から寄贈されて新たに所蔵品となった資料を展示公開しています。何れ劣らぬ、これらの大切な文化財たちは、博物館という”終の棲家“を得て、決して散逸することなく永遠の生命を与えられました。博物館は、いわば、文化財にとっての「針供養」の場所なのです。

古河歴史博物館 永用俊彦