夫水ノ其形ヲ変換スル雪ヲ以テ最奇ナリトス・・・冬時気升テ同雲ヲ成シ、冷ニ遭テ即亦円点ヲ成ス、冷侵ノ甚シキ。一々凝沍シ、下零スルモ其併合ヲ得ス・・・
新春早々、小難しい言葉を、などとおっしゃらないでください。この文章こそ、日本で初めて、雪の神秘、いいかえれば、その生成過程を明らかにした一節なのですから。しかのみならず、その著者は大変古河にゆかりある人物でもあるのです。
そう、引用は『雪華図説』冒頭の一節で、著者は、江戸後期の古河城主、土井利位。待ちわびて過ごした二十数回の冬、重ねた観察の経験から、利位は右のような科学論文を執筆しました。そこでは、雪の生成過程が述べられ、加えて、その効能や特徴が明快に記されています。雪という対象の表現に、自然科学の手法が用いられた日本における最初の業績といってよいでしょう。
観察器具の不自由な時代のこと、利位は幾たびも試行して錯誤を重ね、困難にたびたび陥ったに違いありません。そのような状況を凌駕するくらい、利位は雪すなわちみずからの研究対象を愛してやまなかった、この科学史上の功績は、利位の「雪」に対する愛情なくして果たしうるものではなかったのでした。無垢な好奇心に支えられた無償の行為といえましょう。そのことを利位の20年という途方もない観察時間が、雄弁に証明しています。
嬉々として顕微鏡を覗く利位から、古河に学ぶ子どもたちへのプレゼント。雪華をかたどる市内の小中学校章はそんな利位の情念をあらわしているのかも知れません。(「雪の殿さま土井利位」は3月3日まで)
(写真:2小の中庭にある雪華をかたどった池)
古河歴史博物館学芸員 永用俊彦 |