12年に1度の小さな旅

飾坂東観音巡礼は4月17日まで各札所にて  「くぜの舟 みきはによする 中田寺 大悲のひかり なみへうかみて」  これは、葛飾坂東観音巡礼の第7番札所、萬福寺の観音堂(古河市中田)を詠んだご詠歌(仏や霊場をたたえる歌)です。
 この観音巡礼は、それまで秘仏となっている各札所の観音様を12年に一度、午の年に公開するもので、正徳4年(1714)総和町久能の秀伝という人によって始められました。その年の7月19日、夢のお告げを受けた秀伝は、現在の古河市・総和町・三和町・五霞町・八千代町・野木町の6市町にもおよぶ、村のお寺や観音堂34か所を札所として、それぞれ点在していた観音を一つに結び合わせたのです。現在ではそのほか、長谷観音を含めた7か所が番外として加わり、41か所で行われています。
 さて、今年も行われている葛飾坂東観音巡礼ですが、それぞれの札所では、芝居の一場面などをマネキンでつくった飾り物などで、参詣する人々の目を楽しませてくれます。それは、これを守り伝える人々の、温かいもてなしともいえるでしょう。12年に一度ですが、さながら小さな旅の気分を味わうことができるのです。
 こういった札所めぐりは、葛飾坂東だけではなく、巳年に行われる猿島坂東など、各地さまざまな範囲で繰り広げられています。地域を越えて見知らぬものたちが、観音堂に集い、触れ合う。本来神仏は、信仰の対象ではあるのですが、それだけにとどまらず、行政区の枠にとらわれない地域ネットワークをひろげる役割も持っていたのです。(葛飾坂東観音巡礼は4月17日まで各札所にて)

古河歴史博物館学芸員 立石尚之